大判例

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大阪地方裁判所 昭和38年(ワ)4612号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判決理由〕一、被告は、右小切手による提供は現金をもつてした提供と同一視すべきであると主張し、一般経済社会において小切手が現金と同様の機能を有するものとして流通していることはいうまでもないけれども、だからといつて、法律上小切手と現金を同一視し得るということができないところであり、殊に、原、被告各本人尋問の結果に前掲甲第一号証を考え合わせて認められる事実、即ち昭和三五年頃から同三六年にかけて約一一ケ月間にわたり、被告が本件家屋の賃料を延滞したため同三六年一〇月二六日、所轄警察署において警察職員立会の上、右延滞賃料支払について和解書を作成し、その第三項に特に今後の「賃料は延滞することなく現金持参する事」と記載されている事実から考えると、本件賃料の支払は現金をもつてなされるべきことが特に要求されているといわねばならないから、かかる特約が存するのにかかわらず、小切手をもつてなされた本件賃料の提供が、現金をもつてなされる提供と法律上同一視することができないところである。

二、しかしながら、小切手による提供が、本件賃料弁済のための提供としてその効力を有せず、従つて、原告においてその受領を拒絶したことが正当であるといえるとしても、そのことと、被告が履行遅滞の責を負うべきであるかどうかの点については、少くとも本件においてこれを別個に考えなければならない。即ち、被告が、本件催告賃料を現金をもつて提供したのは、催告期限の翌日たる同年九月三〇日ではあるけれども、催告期限の前日たる同月二八日午後、前示のような事実上現金と同様の経済的機能を有する小切手を持参して催告賃料を支払う態度を明らかにし、その受領を拒絶せらるるや、当日が土曜日、翌日が日曜日にあたり金融機間から予金を引出し得ない事情から、これが可能になる翌々日まで期限の猶予を求め、ついで、翌々三〇日に現金をもつて現実に催告賃料を提供しているのであるから、それまでに、被告から賃料支払のため振り出しを受けた小切手が不渡りになつたというようなな事情があれば格別、そうでない(原告本人尋問の結果によれば、原告が従前二、三回被告から賃料支払のため小切手を受領したことがあるが、いずれも支払われている事実が認められる)本件においては、原告(ないしその代理人)が、被告の懇清に応じて、本件催告期限を同月三〇日まで猶予することが、信義則に合致する正当な態度であるというべく、従つて、同日なされた被告の提供金員を催告期限内の弁済として受領すべきであつたといわねばならないのにかかわらず、これが受領を拒絶したことは、これによつて、原告に受領遅滞の責が生じたものというべく、反面、被告には履行遅滞の責が生じなかつたといわねばならないから原告の本件賃貸借解除権は未だ発生していないというほかはない。(下出義明)

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